自分の内に相手を入れる

IMG_1464IMG_1488「大漁旗を貸してほしい」。昨年の春、東北の漁師が頼まれた。
「小学校の運動会で使いたい。大漁旗を子どもたちに見せてあげたい」という。漁師は、「栄光丸」と染め抜かれた旗を手渡した。栄光丸は、4年前の東日本大震災の津波で海に消えた。船だけではない。人生を懸けてきた海に、人生の土台を根こそぎ奪われた。震災後、多くの人の支えを力に立ち上がり、地域の復興をけん引しているという。後日、子どもたちが夏休みを利用して漁師を訪ね、手作りの大漁旗をプレゼントしてくれた。若緑の下地に、栄光丸の大漁旗と、「がんばれ」「ありがとうございます」などの文字が丁寧に書かれていた。震災に立ち向かう漁師の話を聞いて、一生懸命に作ったのだ。
漁師は「気持ちがうれしかった。それが復興を加速する力になる。
この旗を新しい船に掲げたい」と。相手を「助ける」ことは大変でも、相手に「関心を持つ」ことは誰にでもできるはず。関心は英語でinterestと言うが、同語はラテン語のinter(内に)―esse(存在する)に由来する。”自分の内に相手を入れる”ということだろう。関心を持つ、つまり、”あなたを、私の心の中に入れています”と伝えることが、励ましにつながると思います。

2014年。仕事の関係上月に一度、被災地のひとつである気仙沼に訪れていました。やっと完成を迎える復興住宅。一年間通いつめ、もう来る機会もなくなると思うと少し寂しい気もします。しかし、まわりを見渡すと、土地はまだまだ土盛りを行っている状態で、復興にはどれだけの時間がかかるのだろうかとその時間の長さに感覚的にも不安を覚えます。先日、気仙沼から車を30分程走らせると陸前高田に行けるので、初めて訪れてみました。そこは目を疑ってしまう信じられない光景でした。4年経っても、変わらぬ更地。しかもそこには巨大なベルトコンベアー。毎日、昼に一度山を爆破し、土盛りの土を運んでいるという。その仮設のベルトコンベアーに何億というお金をかけ、土盛りの軟弱地盤の上に本当に建物は建つのか、本当にこれが復興の正しい道なのか、と思ってしますほど不安になります。どこか自然を支配しようとする人類。自然の脅威にかなわない現実。なにか自然と共存するようなかたちで人類がこの先を生きていける道はないのだろうか。悲しさで目に少し涙を浮かべながら、運転の道中、少し人間について考えさせられました。

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